甘い唐辛子
よし、ヤケだ。
私は維十の隣にゆっくり、音をたてないように寝転んだ。
寝息をたてる維十との間、わずか20㎝程度…
維十は私に背を向けている状態で眠っていて、私はその背中を見つめるように寝転んだ。
意外と広い背中は寝息の音が聞こえる度に動く。
こんな些細なこと、ちょっとした時に、
『この人はちゃんと生きているんだな』と
実感する。
嬉しいような、少し照れ臭いような…
暖かい気持ちに、さっきまでの悲しみな不安が消されて…
私はその気持ちに瞳を閉じた。
夢の中には満面の笑みを浮かべる維十がいた。