甘い唐辛子
「どうしました?お嬢。」
首をかしげて言うヤスさんに、罪悪感にも似た疑心をもった。
「…私が、ここに婚約を申し込みに来たのは、ある情報が流れてきたからなんだ。その情報は、海堂が藤成を超すというものだった。
だから、私はここの若頭の維十と婚約し、海堂が強くなった時も藤成を守れるようにしたんだ。」
私が1人、話だすと、ヤスさんの顔からはだんだんと笑顔が無くなっていき、無表情になっていった。
「だが……実際、海堂はそんなに強く無かった。組長があんな人だからな…。
それは、あの噂がデマだったことを示す。藤成の親父や私や維十は、情報元を調べた。」
ヤスさんはずっと黙って、動きもせずに話を聞いていた。
私は一呼吸おいて、
「ヤスさん…いや、靖哉さん。どうしてあんな情報を流したんですか?」
私は強い目でヤスさんの目を見つめ、本当の答えを望んだ。
暫く見つめ合った後、ヤスさんはフッと笑みを溢してうつ向いた。
「…俺の母さんは、あなたのお母さんの妹。あなたは俺の従妹。だからですよ。」
「…は?」
私は意味がわからず、変な声を出してしまった。