甘い唐辛子
「母さんはその約束を死ぬまでずっと守っていた。藤成にいる父さんにもあなたの警護を頼んで、あなたのことをずっと見守っていました。
でも…病気になって、座ることも出来なくなってしまった時、俺に言ったんです。『私とお姉ちゃんの子供、守ってあげてね』と。
だから俺は、母さんと菫さんの約束や意思をそのまま受け継ぎました。」
柔らかく微笑むヤスさんの顔を見て、なぜだか急に泣きたくなった。
頭に浮かぶのはお母さんの顔。
胸に思うはお母さんと、顔は覚えてないけど、私を大切に思ってくれていた智子さんのこと。
溢れそうな涙を飲み込んで、話の続きに耳を傾ける。
「俺があなたを見守っていく間に、あなたはどんどん力をつけて行って、一人でも危険な所を出入りするようになった。
このままでは、危険が増えるばかりだと思いました。だから、あの噂をたてたんです。
あの噂を聞けば、あなたは必ず動くと思ったから。」