甘い唐辛子
10分後、1秒の狂いも無くヤスは部屋の扉をノックした。
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「それで?わかったこと、全て話せ。」
「はい。藤成 霞澄は、藤成組組長・藤成 潤一郎の1人娘で、現在は藤成組の裏の姉御をしてます。」
「っ…」
心臓が握り潰されるように苦しくなった。
イヤな予感が的中してしまった。
動悸を感じながらも平静を装い、ヤスに質問をする。
「裏の姉御?」
「はい。表の姉御はこの世界で知られている方の姉御、つまり、霞澄の継母の女です。しかし、その女には組員を率いる程の力は無く、ハッキリ言って飾りとしかならないんです。
そこで、組員に慕われ、女にしておくには勿体無い程の力を持つ潤一郎の娘、霞澄が姉御の仕事をこなすようになったんです。そうしたら、霞澄の統率力の凄さにいつの間にか『東日本一の姉御』と噂されるようになったんです。
だから、表の飾りの姉御は継母が、裏の本質の姉御は霞澄がするようになったんです。」
「…霞澄の母親は?」
「霞澄が5歳の時に、敵対していた組の組員に殺されています。」
「………」