甘い唐辛子

「私は4歳の時に母親を亡くした。私の誕生日の前日、母親と出かけ、家に帰ると知らない男達が銃やナイフを持って彷徨いていた。
母親は直ぐに緊急事態だと気づき、家に飛び込んで行った。4歳だった私は、母親の腕に抱かれ、訳がわからないまま家に入り、血まみれの男達を見た。」


ゾクリとした。
自分と似すぎる霞澄の経験が、この先も同じようなものであるのならば……


「私は母親の肩越しに男を見た。手には血まみれのナイフを持っていて、こちらに走って来る男を……。
母親はその男に気づき、咄嗟に私を抱き締め、庇った。
男が目の前に来た時、母親の体が一瞬跳ねたのを感じた。
母親から離れた男の手には握られていたナイフは無く、それを私が確認したと同時に母親は横に倒れた。」


霞澄は、無表情のまま、話続けた。

こいつはなぜこんなにも落ち着いていられるのか、不思議でしょうがなかった。

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