甘い唐辛子
「後で聞いた話だ。母親を殺したのは、海堂組の徹という奴だったそうだ。」
え……?
霞澄の母親を殺したのは、海堂の人間…
だから藤成は俺の母親を…?
何とも言えない、苦しいだけの感情を胸に感じ、それから逃れる為に拳を握り、肌に爪を立てた。
もし、俺が霞澄に復讐をすれば、また藤成組が海堂に復讐をする…
そんなの、きりがない。
でも、俺の今までの苦しみと目標は、どうなる…
復讐しないと気持ちが治まらないと言う自分と、
もっと大人になれ、冷静になれと言う自分。
どちらもが自分にあり、どちらも同じ声音で俺に語りかける。
この場合、前者が悪魔で後者が天使か?
「海堂…海堂 維十。お前は私を殺すか?」
バカなことを考えていたところに、突然霞澄が意外な言葉を言った為、無意識に勢いよく霞澄を見た。
月光に照らされる真顔の霞澄は、今までに無いほど綺麗だった。