甘い唐辛子
「私はお前を恨んではいない。徹という奴は、既に警察に捕まっている。」
霞澄は、俺の目を見据え、淡々と言葉を紡いでいく。
俺は、言葉を返せなかった…
俺よりも、しっかりと現実を見つめ、変な復讐も考えていない霞澄と違い、俺はなんてバカだったんだと、
凄く恥ずかしかった。
「私は恨んでいない…が、組員は違ったようだ。8年前、海堂を襲ったのは一部の組員の独断でしたこと。私も親父も幹部達も知らなかったことだ。しかし、責任は私にもある。」
霞澄は立ち上がり、俺の目の前に立った。
その立ち姿は、俺より、海堂の姉御以上に
美しくしっかりとし、
大きな組織を背負っていくようなオーラが感じとれる、
そんな姿だった。
俺はそれをただジッと見つめていた。
「藤成組の第2の姉御として謝る。
申し訳なかった。」
そう言って、霞澄は深く頭を下げた。