甘い唐辛子
座り込んで泣くのを必死に我慢している虎太郎の許に行き、虎太郎の脇に手を入れて抱き上げた。
「よしよし。よく泣かなかった。」
「う…僕強いもんっ。」
「うん。強いな。」
抱きながら頭を撫でてやると、虎太郎は私の首にしがみ付いてきた。
そこに組員達が走って来た。
「姐さん!!」
「おい、廊下を走るな。騒がしい。」
転ぶぞと言おうとしたが、さすがに20代後半の男が転ぶとは思わなかった…が、見事に転んだ。
それも大きく、団体で。
虎太郎の可愛らしさの欠片も無い。
「お前ら、本当にヤクザの組員で、立派な大人か?」
「うぅ…」
「いててて…」
恥ずかしいのだろう。
少し目元を赤くしながら、組員達はゆっくりと立ち上がった。