甘い唐辛子
お父さんは目尻を下げ、悲しそうに、穏やかに笑った。
その手は私の頭を撫でていた。
「お前は十二分に、俺の、藤成の力になってくれてるよ。本当に感謝してる。ありがとうな。」
藤成組の組長が私なんかに頭を下げている。と思うと、私は慌てて頭を上げるように言った。
「やめて、お父さん。藤成の組長が娘に頭を下げるなんて情けない。いつも胸を張って、堂々としていてください。でないと、怒りますよ。」
私が冷たくそう言うと、お父さんは一瞬目を見開き、次に目を細めて穏やかに笑った。
「…お前はやっぱり、菫の娘だ。」
「菫にも結婚を申し込む為に頭を下げた時、同じようなことを言われた。」と、お父さんは私の目を見て言った。