甘い唐辛子
「名前は?」
2匹を見つめていた俺は見つめたまま問いに答えた。
「青い首輪がシェリー。赤い首輪がジュリア。」
「へー。」
犬と戯れる和やかな光景なのだろうけど、霞澄の無表情で崩れてしまう。
池も岩も無い、芝生のただっ広い庭に、不思議な光景は不釣り合いだった。
空はだんだんと雲を着ていき、もうそろそろ雨が降りだすと言う時、すっかり忘れていた海と希波矢が門から入って来た。
「よっす!」
「うっす。」
「って、前の美人さん!!」
「何、やっぱりこっちの世界の人だった?」
「着物似合う!色気ある!抱き締めてぇ!」
「うるさい、希波矢。とりあえず、中に入れ。」
質問攻めに眉を潜め、2人を中へと促す。
「あなたも、どうぞ。」
霞澄の方に向いて言うと、彼女は頷いて付いて来た。
ちょっと可愛いと思ってしまった……。