甘い唐辛子


「可愛い!!」
希波矢もその姿を見ていたんだろう。そう叫んだ後、霞澄を抱き締めた。

ガチャ
「姐さん、こちらで…」


その時、タイミングを測ったように藤成の組員の1人が部屋に入って来た。
と同時に霞澄を抱き締める希波矢と目が合い、瞬時に組員の額に青筋が浮き出た。


希波矢は恐怖で動かない。


「おい…若いの…。テメェ、姐さんに触れるとはいい度胸してんな…腕、いらねぇのか?ぁあ゙?」

ドスの効いた低い声に、ギラリと光る鋭い目。
決して穏やかでは無い口調に、希波矢はいつの間にか霞澄を離し、部屋の隅の方に逃げていた。


「やめろ、マツ。」
「しかし!姐さん!」
「お前…。この部屋に入る時、ノックしたか?」

組員はピタッと動きを止め、さっきの青筋もどこへやら…顔を白く…青くさせていた。


「私は…お前に教えなかったか?部屋に入る時は、声かけるかノックしろ…と。マツ。忘れたか?」

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