甘い唐辛子
「失礼しやす。若をお連れしました。」
私が普段着に着替え、一息ついた頃、神楽が襖越しに声をかけてきた。もう、緊張していないようだ。
この部屋には、花が生けられ、バカが付く程高い壺が飾られている。
私の「部屋」ではなく、私の「和室」だ。
そこに虎太郎を入れるのは、初めてのこと。
「入れ」の言葉に開けられた襖の向こう、緊張している様子の虎太郎が神楽の影に隠れるようにしていた。
「虎太郎、おいで。」
腕を広げて迎えると、虎太郎はおずおずと出てきて私の胸に飛び込んで来た。
「下がれ。」
私に神楽は頭を深く下げて、襖を閉めた。