甘い唐辛子

姐さんは結局、虎太郎に指一本触れることなく部屋を出て行った。

虎太郎の目には、涙が溜まり、私の胸に顔を埋めた。


「ママ、いや。姐ちゃんがいい。」
「虎太郎…」

虎太郎の小さな手には、私の服が握られ、私は虎太郎の頭を撫でることしかできなかった。


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