君という海に溺れる
彼女にだって抱えている闇があるのだと、誰かがそう言っていた。
そうなのかもしれない。
私がそうであるように。
あの子もまた、深い闇の色を知っているのかもしれない。
それでも。頭ではそう理解していても、それを頑なに否定する自分がいる。
だってあの子の周りには、あの子を愛してくれる人がたくさんいるから。
私が欲しい温もりを知っているから。
醜くて醜くて。
そんな自分が更に嫌いになっていく。
負の連鎖は終わらない。
そう思っていたのに。
「…俺は、ハナとこうやって一緒にいるの好きだよ」
そんな卑屈な言葉を吐いた私に 、アダムは笑いながらよく知る音楽を口ずさむ。
────────────コポ、
アダムの声に合わせるように、息をする音が聞こえた。
一筋の光が差し込む。
(それは迷い子を導く)