君という海に溺れる
「馬鹿だねぇ、ハナは」
そんなどうしようもない強がりをする私に降ってきた柔らかな声。
耳を擽ったその音にフッと手のひらから力が抜ける。
怖くて向けることの出来なかった顔を上げれば、そこには綺麗な微笑みを向けてくれるアダムがいた。
その笑みは歌声と同じように空気ごと私を包んで。
「ハナはさ、言葉にして口に出すのが苦手でしょ」
ガラス玉のように木漏れ日を映した瞳が射抜く。
光を浴び輝く眼差しにごくりと息を呑んだ。
「それに、人より耳がいいんじゃない?」
それは決して馬鹿にしたようなものではなく、本当に真っ直ぐに告げられた言葉。
首を傾げてはいるものの、彼には自信があるらしい。