君という海に溺れる
悪戯に細められた左目がそれを物語っている。
その表情にドキッとしながら、私は彼の言葉に素直に頷いた。
昔から思いの丈を形にするのは苦手だ。
この思いの全てを表せる言葉を見つけることが出来ないから。
幼い頃、周りとは少し違った感覚を誰とも共有出来なかった思い出は今でもトラウマの一つだったりする。
それに耳がいいのも本当。
それで得をしたことなど殆んどないけれど。
ただ人より少し他人の機嫌に敏感になるくらいのこと。
それがいいことだとはあまり思わない。
呼吸は、苦しくなっていくばかりだ。
「やっぱり」
ハナの言葉は独特に聞こえるから。
そう言ってアダムは笑顔のまま空を見上げる。