君という海に溺れる
いつしか私は自分の思いを吐き出すとき、笑うようになった。
出来る限りの不安を隠すように。
そして、そんな自分をまた嫌いになっていくのだ。
「ハナ。人の気持ちを全部理解できる人なんていないんだよ」
だって、同じ人間は一人だって存在しないんだから。
「ハナはハナ。俺は俺、でしょ?」
そう言って、アダムはその柔らかく長い睫毛を揺らす。
綺麗に弧を描いた唇は、自分もそうなのだと言っているようにも見えて。
その儚い横顔に、私は静かに次の言葉を待った。
風がアダムの頬を撫でる。
枝葉が揺れその顔に小さな影を落として。
そして彼の笑みが深まった。
「だから悩みの大きさは計り知れない」