君という海に溺れる




社交辞令だと。私を安心させるためにくれた言葉だと、そうわかっていても。


アダムがその声で紡いだ一言が、ふっと私の中の重りを少し吹き飛ばしてくれる。

醜い闇を拭い去ってくれる。


波が穏やかに揺れて、幸せだと胸が暖まるのを感じた。

暗い海の底で太陽の光を見つけたように。

幸せの在処を照らす。




「それに…その彼女は俺に会えないけど、ハナは俺に会えたじゃん」




それは幸せじゃないの?なんて、悪戯っ子みたいに笑うから。

そうだね、と久しぶりに心から微笑んだ。

それを見たアダムがまた笑って。



───────────コポ、



小さく、幸せの音が響いた。






融解していく。
(君という鮮やかな色に触れて)



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