君という海に溺れる
「ハナはその子に嫉妬してるんだよね」
アダムの率直な物言いに、私は素直に首を縦に振る。
どうしてだろうか。
普段なら、絶対に"違う"と言い張ってしまうのに。
頑なに受け入れることを拒むのに。
それは誰にも知られたくない黒い感情だから。
それなのに、アダムの問い掛けにはどうしてだか嘘を吐けない私。
きっと、アダムのせいだと思う。
アダムの声は狡いのだ。
自然に、本当に自然に彼は私を甘やかす。
まるで小さな子どもを宥めるように。
"そばにいるから"と言うように優しく甘やかすから。
気付けば私の口は素直に彼へ言葉を委ねてしまうのだ。
アダムにはそんなことをしている自覚など全くないのだろうけれど。