君という海に溺れる
でも、その優しさが心地好くて。
届く声が愛しくて。
結局、今日も私は彼に身を委ねるのだ。
「…してるよ、いっつも」
吐き出したあの子へ抱く思い。
それは昔から変わらないもの。
それこそ、物心ついた頃からずっと。
彼女は私の初めてにして最大のコンプレックスの対象なのだ。
いつだって負けたくなくて。
何か少しでも勝っていたくて。
それが姉としての威厳を保ちたい故なのか、それともただの人間としての欲なのかはわからない。
ただ、日々持ち続けていた感情。
けれどそんな私の思いが強くなればなるほど、あの子はどんどん先に歩いていった。
今ではもうこの手を伸ばしても届かないほど遠くに。