君という海に溺れる




「あの子は…いつも、私に出来ないことを簡単にやってみせるから」




独り言のように口から落ちていったそれ。


ずっとずっと、隠してきた。

誰にも言うことを許されなかった一つの本音。


"お姉ちゃんなんだから"


幼い頃から何度となく繰り返されたその言葉が、あの子に対する思いを叱り付けていて。

声にすることを躊躇っていたけれど。

初めて口に出した思いは、閉じ込めていた箱の蓋を叩き壊した。


いつだって私の一歩も二歩も先を行くあの子。


その姿に一体何度劣等感を抱いただろう。

幾つの悔し涙を流しただろう。


勉強も人間関係も。仕事も恋も、自立すらも。

何一つまともに出来ない私。




「こんな出来損ないに、勝てるものなんて何もない」




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