君という海に溺れる
(アダム、が…?)
驚いた。
だって、私から見た彼は完璧そのもので。
彼を羨む人は星の数ほどいても、彼が誰かを羨む姿など想像すら出来なかったから。
驚きのままついアダムの顔を穴が開きそうなほど凝視してしまう。
そんな私に彼はクスリと笑みを溢し、その綺麗な唇を動かした。
「したよ」
──────────────コポ、
たった三文字。
そう言ったアダムの顔は今まで見たことがないくらい"人間"らしくて。
コクリと喉が鳴る。
その切ない瞳が、記憶の奥の姿と重なった。
『そんな顔しないで』という誰かの叫びとともに。
「俺ね、自分の顔とか声とか…大っ嫌いだった時があったんだ」
遠く景色をその目に映し言葉を紡いでいくアダム。