君という海に溺れる
ガラス玉はゆらりゆらりと波に揺らめいて。
その瞳には目の前のものではない何かが、今ではない時が映っているように見えた。
その瞳の先にどんな景色が見えているのか。
それは私にはわからない。
触れてはいけないとも思った。
それはきっとアダムの大切な宝物。
揺れる波は穏やかに彼の時を流れているから。
今私に出来るのは、黙ってその言葉の続きを待つことだけ。
「何ていうか…もっと男らしい顔とか低い声とかに憧れてさ」
苦笑とともに紡がれた言葉は私を再び驚かせるには十分なものだった。
まさか彼からそんな言葉が出てくるなんて。
けれど、その真剣な横顔に真実なのだと理解する。