君という海に溺れる
女の私が羨むほどに美しい顔立ち。
脳に響く甘い声色。
誇りだと言っても誰もが頷くであろうその魅力。
私では到底敵わないそれが彼のコンプレックスだったなんて、思いもしなかった。
しかし、紡がれたアダムの言葉は全て過去形で。
つい"今は違うの?"と言葉が口をついて出る。
その言葉に反応したアダムがゆるりと首を縦に振った。
細められた瞳に映る、幸せの七色。
「昔、ある人に言われたんだ」
"綺麗なのにどうして?"
"私、大好きだよ"
「その言葉に、救われた。今もずっと…救われてる」
そう言って彼は嬉しそうに頬を弛め口角を上げる。
初めてだった。
アダムが自ら自分のことを話すのは。