君という海に溺れる




【学校】という響きは、その言葉だけで恐怖を覚える存在だった。


大嫌いだった場所。

吐き気を覚えた独特の匂い。

長く先が見えないような廊下。

目の当たりにする言葉という武器。

薄っぺらさを思い知らされた友情。


まだ幼かったのだと、そう言われてしまえばそれまでなのかもしれない。

私も、周りも。

まだ、何も知らなかったのだ。


善と悪の違いも。

本音と建前の境も。

痛みと苦しみの在処さえも。


何も、わかっていなかった。




「…やっぱきついな…」




それでも、知らなかったという言葉では済まされないものがある。

あの日々の中で負った傷は、今もなお鮮明に私の中に残っていて。




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