君という海に溺れる
「──────っ」
あぁ。息が、詰まる。
どっちが上でどっちが下か。
どっちが右でどっちが左か。
何が現実で、一体何が夢なのか。
飛び込んでくるたくさんの思考に頭が追い付かない。
ぐるぐるぐるぐる廻る世界に気分が悪くなる。
まるで無重力地帯に放り出されたような感覚。
何もわからなくなりそうな恐怖が全身を駆け巡った。
混沌とする思考のなか、重い手を無意識に伸ばした先には枕元に落ちているヘッドフォン。
縋るようにそれを引き寄せ音楽をかける。
少しの、小さな安息を求めて。
真っ暗な闇の中、聞こえてきた歌声はいつもと変わらずどこか懐かしい。
そしてずっと、ずっと知っている声。
いつもそれは私をこの深い海の底から引き上げてくれる。
体の力を抜いてくれる。