君という海に溺れる




決して消えることなどないのだと、毎日痛いくらいに思い知らされる。


そのたびに疼く古傷は、少しずつ私の記憶を閉じ込めようとしてきた。


繰り返す、過ちにも似た行為を。


やっぱりもう、見るのは止めてしまおうか。


両手にずっしりと響くアルバムの重さに耐えきれなくて。

再び蓋をしてしまおうかと視線を逸らしかけたとき。


ふと、一枚の写真が目に飛び込んできた。




「…あ…」




その中で笑っている一人の男性の姿。

その顔に当時の記憶が戻ってくる。

辛いだけだった学生生活の中で、唯一心踊らせていた季節のことを。

ただ思うだけでよかった瞬間。

大好きだと思っていたあの人。




「懐かしいなぁ…」




< 130 / 296 >

この作品をシェア

pagetop