君という海に溺れる
落ちたのは他のものよりも少し色褪せた写真。
どう見てもあのアルバムに挟まっていたものではないようで。
恐らく写真を整理する際にどこからか紛れ込んでしまったのだろう。
(お母さんのかな?)
色を見る限り最近のものではない。
母の古い写真だろうか。
何でこんなところに、と不思議に思いながらも落ちたそれに手を伸ばす。
「────────────────え?」
触れた紙を裏返して息を呑んだ。
まるで時計の針が止まったような錯覚に瞳が揺れる。
そして一気に流れ込んでくる遠い遠い記憶。
拾い上げた写真の中には、小さな女の子と綺麗な瞳の女の人がいた。
幸せそうに頬を寄せあって微笑みながら。
色褪せない記憶。
(求め続けた笑顔があった)