君という海に溺れる
誰もいない、暗い暗い沼地に足をとられる。
辺りの木々は互いにひしめき合い太陽の光さえ通させはしない。
どこからか降りだした雨はあっという間にこの身を濡らして。
ガタガタと寒さに震え出す体。
消えていくあちこちの感覚。
声を上げようといくら口を開いてみても、喉は引きつるばかりで音を作ることは出来ない。
歩き出そうと体を捩っても、足は一歩も動くことをしない。
視線を落とせば鉄の鎖がジャラリと音をたてた。
鼻を刺激する錆びた鉄の臭い。
少しずつ大きくなっていく嘲笑の波。
それは一番聞きたくない大嫌いな音。
恐怖の音が迫ってくる。
頭が痛い。気持ちが悪い。逃げ出したい。
(た す け て)