君という海に溺れる




うなされていたのだろうか。

視線を動かした先に見えた手のひらは、強く布団のシーツを握り締めていた。




(…あー…なんか、嫌な気分…)




夢の内容はもう覚えていない。

それでも体の内側から沸き上がってくる嫌な感覚。


一体何が見えていたのだろう。

何となく、暗い場所にいた気がするけれど。

目を開いたと同時にそれらは忘却の彼方へと消えていった。


ただ、毛穴から体全部を蝕んでいくような恐怖だけはしっかりと残っていて。




(怖かった、のか)




そんな夢を見たのは久しぶりだと思う。

いつも眠りが浅いせいか夢を見ることが多い私。

それでも起きた後まで体が震えていることは滅多にない。


特にアダムと出会ってからは。




< 150 / 296 >

この作品をシェア

pagetop