君という海に溺れる
【依存】という言葉を聞いて思い浮かべるのは無機質なそれではなく、そこから聞こえてくる音の方だ。
その旋律に、声に私は依存している。
寂しい午後も嬉しい休日も、悲しみに暮れる夜も。
いつも共にいてくれたその音色たち。
(あいしてるのよ)
ふぅと息を吐き出し目を閉じて。
ゆっくりとした動作で指にあたっていたヘッドフォンわ手に取り耳にあてる。
手探りでもわかる再生ボタンを押せば、流れてくるのはいつも同じあの人の歌声。
慣れ親しんだこの声以外を聞く気にはあまりなれない。
この声だけで、もう長い時間を過ごしてしまった。
初めて出会ったあの瞬間から。
この声が体のあらゆるところを形成している。