君という海に溺れる




あの声は私だけのものではないけれど。

それは十分すぎるほどわかっているけれど。


それでもあの声を聞いているその時間だけは、それを独り占めしていたくて。

私だけのものにしていたくて。


閉鎖的な空間の中で、ただその音色に没頭する。

まるで時間という概念が消え去ったかのように。


聞こえてくるあの人が紡いだ言葉はまるで魔法みたいにこの心を包んでいった。

そして黒く歪んだ靄を晴らしてくれる。

太陽の光を誘うように、水面を揺らしてくれる。




(だから、抜け出せない)




だから手放すことなんて出来ないのだ。


この世界に生きる理由がそこにはあるのだから。






食い尽くされていく体。
(麻薬のような甘い罠)




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