君という海に溺れる
辺りの景色がだんだんと朱色に染まっていく夕方。
数日ぶりにアルバイトという重圧から解放された私は、あの場所を目指していた。
(やっと、行ける)
何よりも先に、早くアダムに会いたくて。
約束も確証も何もないけれど、何となく彼がそこにいるような気がして。
胸の中で響く穏やかな波の音に自然と肩の力を抜きながら歩みを進める。
「…あ」
ゆっくりと辿り着いたその場所に見つけた後ろ姿。
その存在にホッと息を吐いて、やっぱりいたと思いながら彼に近付く。
「…あれ?」
けれどそこにいたのは、いつもとは少しだけ違う彼だった。
(寝てる…)
見つけたのは木に背中を預けすやすやと寝息をたてているアダム。