君という海に溺れる




長い睫毛が儚く彼の顔に影をつくっている。


その姿はまるで童話の中に出てくるお姫様のようで。




(バイバイは、したくないよ)





このまま消えてしまうのではないかと不安になってしまう。

幸せな夢があっという間に覚めてしまうように。




「…綺麗な顔しちゃって」




羨ましくなるくらい綺麗な顔。

年を重ねてもなお色褪せない魅力。

増していく輝き。




(昔より綺麗なんじゃないの?)




過ごした歳月の分だけ彼に降り積もった大人の色気は目眩を誘うほど。


そんなアダムを見ていると、自分が女だという自信がなくなりそうだ。

だって私が男だったら、間違いなく私ではなく彼を選ぶだろう。


それくらい、彼の魅力は底知れない。




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