君という海に溺れる
そっとアダムの前に膝をついていつもより赤みを帯びている髪を撫でる。
夕陽に照らされてオレンジに染まる肌は空気に溶けて。
そよぐ風が彼をお伽話の世界に連れていってしまいそう。
私がどんなに手を伸ばしても届かない世界へ。
そんな光景がどうしようもなく切なくて。
涙が零れてしまいそうになった。
(どうか、おいていかないで)
今度は、離さないでいて。
あの日のように消えないで。
ふわりと私とアダムの間に一筋の風が吹き抜ける。
「…ん…」
その風の冷たさに気付いたのか、僅かに身動ぎするアダムの体。
そしてその目蓋がゆっくりと開かれた。
─────────────コポ、
色素の薄い彼の瞳が、揺らめきの中に私を映す。