君という海に溺れる
「あー…俺、寝てた?」
右手で目を擦りながら起き上がった彼に頷けば、恥ずかしそうに頭を掻くアダム。
(珍しい…)
初めて、表情を崩すアダムを見た気がする。
それは私がアダムをちゃんと見ていなかったせいなのか。
それとも彼が見せないようにしていたからなのか。
あまり、自分のことを話したがらないアダムだから。
本当のところはわからない。
でも、それはどちらでもいいのだと思う。
どちらにしても、彼の新しい表情が見れて嬉しいと思う私がいて。
それだけは真実なのだから。
そして、そう思った自身に驚いた。
(見て、みたかったの…?)
いつだって人の顔色は窺っても、知りたいと思うことのなかった私。