君という海に溺れる
だって人は仮面を被る。
知っているから、興味さえ沸くことはなかった。
それは私に何も与えないと思っていたから。
それなのに、私は今彼の表情に嬉しいと思っている。
それは私にとって驚くに値する変化だった。
「──…な、ハナ?」
「…あ、うん?」
私の名前を呼ぶアダムの声にハッと我に返る。
どうやら深く考え込んでいたらしい。
知らず知らずのうちに俯いてしまった顔を上げれば、不思議そうな顔をしてこちらを見ている綺麗な顔。
寝起きのせいか、その顔はいつもより幾分幼く見えて。
「ボーっとしてたけど、どうかした?」
首を傾げている姿すら可愛く見えてしまうのだから笑えてくる。