君という海に溺れる




暫くの間そんな時間が続き、空は色を変え星が瞬き始める。

移り変わっていく空を見上げていれば、ふとアダムが口を開いた。




「…俺のせいかな」




静寂に響いた哀しげな音。

その言葉に私は顔を上げる。


視線の先には、切なそうに笑う彼の姿。

今にも泣き出してしまいそうな彼に手を伸ばしてしまいそう。


けれど、私には彼が呟いた言葉の意味が理解出来ない。


何故アダムのせいなのか。

どうしてそんな表情をしているのか。


そんな戸惑いが顔に出ていたのだろう。

そっと私の目蓋に彼の指が触れた。




「ハナの涙、俺が一番に拭ってあげようって決めてたんだ」




まるで自分に言い聞かせるように紡がれた言葉。




< 172 / 296 >

この作品をシェア

pagetop