君という海に溺れる




それはあの日の震えた声と重なって。

胸が締め付けられるように痛い。


それでもアダムから目を逸らすことは出来なかった。


涙の流しすぎで腫れてしまった目は見れたものではなかったけれど、アダムは特に気にした様子もなく私の瞳を覗き込む。


そして、笑った。


夜空の星を身に纏い、私が好きな木漏れ日のような笑顔で。

細められた瞳が甘く揺れる。




「でもやっぱり、笑った顔が好きだな」




ハナが笑ってくれると俺も笑えるから。

だから笑って。


そう微笑んだアダムに、胸の奥から込み上げてくる愛しさと切なさ。


どうしてだろうか。

他の誰かから貰っても苦しさしか感じなかった言葉が、こんなにも響く。




(それは私の台詞だよ)




< 173 / 296 >

この作品をシェア

pagetop