君という海に溺れる
「俺には難しいことじゃないんだよ。ハナの"本当"に気付くことは」
ゆったりと、しかし自信に満ちた声色で。
アダムは私に語りかける。
その言葉で漸く理解した。
あぁ、そうか。
私はアダムの前で笑えていたのか。
嘘偽りで塗り固められた仮面なんかじゃなく、素顔の私で。
だから彼は見つけてくれたのだ。
私の本当の気持ちを。
きっとあの瞬間、私は無意識に笑っていたのだろう。
本当に心の思うままに。
あの時だけではない。
アダムといる時間はいつだって心のままだったのだ。
(だって、幸せなんだ)
それが、彼といる瞬間のたった一つの本音。
見失ってしまいたくない想い。
「ハナだって、俺の言葉が本当だってわかってくれてる」