君という海に溺れる




顔は言葉以上にたくさんのことを物語るから。


私がアダムの言葉を信じられるように、彼もまた気付けるのだと笑ってくれる。


思わずぐっと痛くなる目の奥。


本当の気持ちを描けば、こんな素敵な笑顔に出会うことも出来るのだと私は知った。

それは簡単なことではない。

数えきれないほどの傷を必要とするかもしれないけれど。


それでも空を覆っていた雲が晴れて。

切れ間からは光を受けた虹が覗く。

その姿を海に映せたなら。


まだ、夢を見ることが出来るだろう。




「…ありがとう、アダム」




そう小さく紡いだ私に、アダムは本当に綺麗笑みをその顔に浮かべた。






忘れていた言葉。
(それは大切な幸せの形)




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