君という海に溺れる
夜の空に響く彼の歌声。
染み渡るそれは心の鎖をいとも簡単に解いて。
私から心の言葉を引き出す。
「アダムはさ、誰かの一番になりたいとか…思ったことある?」
私の涙も乾いて、アダムが微笑みの後に口ずさんだ歌が終わった頃。
私は視線を空へ投げたまま口を開いた。
何の脈絡もなく紡いだ質問に、一瞬の間が出来る。
そして、その後にゆっくりと首を傾げるアダム。
顔を向ければ、さらりと流れ落ちる彼の髪。
多分、質問の意味がわかっていないのだろうと思う。
それくらい彼は不思議そうな顔をしているから。
その可愛らしい動きに私の口元には自然と空の三日月が映った。
「今、また可愛いとか思ったでしょ」
「うん」