君という海に溺れる




何でわかるの、とはもう聞かない。

きっと私の表情は、それが伝わってしまうくらい緩みきっていると自分でも思う。

それが私の本音。

それを偽るつもりはない。


アダムが、わかると言ってくれたから。




(ううん、違うね)




本当はずっと前から気付いていた。

アダムがいつも私の本音を見つけてくれていること。

探してくれていたことに。


彼は私の仮面を外してくれた。

何重にも重なっていたそれを一枚一枚、その指で、声で、微笑みで。


そして暗い世界で手を引いてくれた。


だから、私の口からはいつだって素直な言葉が飛び出す。

私は迷子にならずにいられるのだ。




「それで。アダムは思ったことある?誰かの一番になりたいって」




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