君という海に溺れる




「…やっぱ…私がおかしいのかな」




自分で話しておきながら、その内容に呆れた笑いが込み上げる。

空に広がる幾千の星が水面に映るように丘の下に広がる明かり。

そんな暖かな光にこの話は似合わない。


きっとそれは依存によく似た感情で。

抱き始めたのはいつからだっただろうか。


誰にも頼られないことが、頼れないことが酷く怖いと感じるのだ。


たったそれだけのことが、私の存在意義を曖昧にさせる。

世界中から嫌われているんじゃないかと錯覚させる。


そして泣き場所を奪っていった。




(私は…消えてしまう"いつか"の瞬間に怯えてるんだ)




静寂を壊すように遠く踏み切りが鳴るなか、アダムからの返事はない。




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