君という海に溺れる
続く沈黙に話さなければよかったと、心の中で一人後悔した。
さすがのアダムもこの感情ばかりは受け入れがたいのかもしれない。
「…アダ…」
「一人の人の一番にっていうのは考えたことなかったかなぁ…」
やっぱり何でもないと言おう。
そう思って彼の名前を呼ぼうとしとき。
甘く響くあの声がそれを遮った。
誘われるようにアダムの瞳へ目を向ければ、そこに浮かんでいたのは大きな優しさと温もり。
まるで今は見えない木漏れ日のようなそれに息を呑めば、アダムの唇が"でもね"と動いた。
「でも…この時間が一番だったらいいのにって、そう思ったことはあるよ」
その言葉とともに、ふわりと一陣の風が二人の間を吹き抜ける。