君という海に溺れる
だから、彼の微笑みは美しい。
だから、彼の瞳はすべてを魅了する。
「きっとハナも知ってるよ。海の存在を」
知っているから欲しいと思うんだ。
アダムは少し困ったように眉を下げてそう言った。
どこか願うように。
祈るような色を瞳に込めて。
私は知っているのだろうか。
その暖かさを。
だから願ってしまうのだろうか。
もう一度溺れてみたいと。
そのための勇気を手に入れられたなら。
私は辿り着けるのだろうか。
海の底に沈めたはずの箱が、その鍵を外そうと音をたてる。
ガシャンガシャンと鳴り響くそれを聞きながら、私は小さく頷いた。
そうであればいいと心の奥で願いながら。
微笑みの残像。
(あの海に隠した想い)