君という海に溺れる
「…あー…」
空気に触れた声は相変わらず擦れているけれど。
それでも今日は何かが違うと直感が告げる。
そんなことを思いながら、私はゆっくりと辺りを見渡した。
普段より少し早い時間だからだろうか。
窓から差し込む光は部屋を白く照らしている。
それはいつかの日の朝の色に似ていた。
薄く開いた瞳でそんな白をぼんやりと眺めていると、微かに見に届いてきた小さな音色。
耳を澄ませば、よく見知った大好きな歌が傍らに放り出されたヘッドフォンから流れていて。
(…そういえば聞いてたかも)
どうやらあの人たちの歌を聞きながら眠りに落ちてしまったらしい。
「…あ、これ好き」
聞こえてきたその音に思わず口の端が上がる。