君という海に溺れる
(…ちゃんと聞きたい)
そんな衝動に駆られ、ヘッドフォンを耳に掛け歌を流し込む。
耳から入ってくる大好きで大切な声。
全身を廻るその声に体の力を抜いた。
見上げた天井に重ねる深い青。
そして思い出す。
『笑顔からは"好き"が伝わるんだよ』
あの日の、彼の言葉を。表情を。
目を閉じて目蓋の裏に浮かぶ彼の笑みに、少しだけ素直になってみたいと思った。
傷付けることに恐れるのをやめて。
傷付くことに怯えるのもやめて。
彼がくれた笑顔のように。
彼に伝えた本音のように。
偽りでない心に向き合ってみたい。
(だって…あの日、アダムに伝わった)
諦めていた思いも、忘れかけていた言葉も。
ちゃんとアダムに伝わった。