君という海に溺れる
灰色の世界の中で、いつしか呼吸の仕方を忘れてしまった。
空は遠く果てしなく、大地はあまりに広く深い。
人は太古の昔、海から生まれてきた生き物なのだと誰かが言っていたような気がする。
だからだろうか。
水の音がどこか体に馴染むのは。
どこか怖いと感じるのは。
海を泳ぐための尾びれも、呼吸するためのエラも無くなってしまったけれど。
この体は覚えているのだろうか。
思えば胎児も水の中で呼吸している。
ゆらり ゆらり と波に揺られて。
それならば、私の海は一体何処にあるというのだろう。
コポリ、
体の奥の深いところで、どこか懐かしい呼吸音が聞こえた。