君という海に溺れる
その間、私はどれだけの迷惑を周りの人間にかけてきたのだろう。
そう思えばまた口を開くのが怖くなって。
逃げ出してしまいたくなる。
けれど臆しているわけにはいかないと、隠した手で拳を握った。
そして
「…いつもごめん、ね。あ…あり、がと」
"ごめん"と"ありがとう"たったこれだけの言葉。
それを言うために、私はどれほど多くの時間を費やしてしまったのだろうか。
そして同時に思い出す。
私が誰よりもこの二つの言葉を大切にしていたことを。
私はずっと、この言葉の意味を知っていた。
────────────コポ、
体の奥が安堵の息を吐き出す。
(やっと、言えた…)
私は何よりこの言葉が大切だったのだ。